切迫妊婦族を支える環境が整った大陸。
主治医という名の預言者を筆頭に、助産師・看護師といった妖精たちが高度な魔術で冒険をサポートしてくれる。
勇者が万が一早産となった場合でも、対応するNICUを院内に備えていれば即対応可。
また、内科とも連携しているため、合併症が発覚した場合も心強い。
ただし、全体的に貧困層の空気が漂い、設備・食糧の内容には期待できない。
切迫妊婦族にイチオシの大学病院大陸
賢者が安静冒険を繰り広げた大学病院大陸では、毎週火曜に「教授回診」と呼ばれるイベントがあった。
偉そうなおじさんが現れ、腰巾着(賢者の預言者の子分格)が一通り超早口で賢者の状態を報告。
その報告を聞き終わる前に「調子はどうですか?」と問われ、「大丈夫でs」と言い終わる前にカーテンを閉じて立ち去る。そして腰巾着がそそくさを後を追う・・・・
という、コントのようなイベントだ。
毎週毎週繰り返されたが、あれは35wに達した日だった。
いつもの「調子はどうですか?」が
「もう少しですね。」
に変わったのだ!!
ちょっと感動してしまった。
退院後、ドラマの「ドクターX」を見たとき、吹いてしまった。
権力者が腰巾着を引き連れているシーンなどはリアリティを感じてしまった。
それはともかく、大学病院大陸では研修医に診察に立ち会われるなどで妊婦族に忌避される場合があるが、
立ち会う方もとても気を遣ってくれるので、それで嫌な思いをしたことはなかった。
また、賢者の誕生日に妖精が「お誕生日おめでとうございます!」とイラストを描いてくれたり、チェキで写真をとってくれたり。
車椅子でトイレに行く途中で「今日は天気がよくて眺めがいいから」と窓側にわざわざ寄ってくれたり・・・・と、随所で人の優しさを実感する大陸だった。
その上、切迫妊婦族を保護する環境はまさに理想的だった。
MFICUに移ってからは、近隣の病院から容体の急変で妊婦族が運び込まれてくるたび、「最初からここにいることができるなんて、恵まれている。」とつくづく思ったものだ。
幸いにもお世話になることはなかったが、早産児に対応するNICUも目と鼻の先だったので、万が一のときでもここ以上に安心できる場所はない、と思えた。
あらゆる科が備わっているのも大きな魅力で、内科や小児科の預言者とも密に連携が取れており、妊娠糖尿病発覚のときは内科の預言者が血糖値と魔法薬「インシュリン」の量を管理・調整してくれ、34wで魔法薬「マグセント」を外すときは、小児科の預言者が待機していてくれた。
出産時に関しても、あまり期待はしていなかったが、結果的に立ち会い出産やカンガルーケアも実現できた。余談だが桐箱に入れたへその緒ももらえた。
最近は「出産のスタイルも自分らしく」的な風潮も強く、理想の出産・産後を思い描いている妊婦族には不人気である点は否めない。
確かに、大学病院大陸や総合病院大陸は内装や食事もショボく、出産も無痛分娩や水中出産などとはいかず、出産後も母子同室ではなくはるか彼方の新生児室に通わねばならなかったりするなど、デメリットはある。
しかし、それを超えて余りあるメリットがたくさんあるし、何より切迫妊婦族と胎内の勇者にとっては、この上ない環境と言える。
少しでも大学病院大陸や総合病院大陸のイメージが良くなれば幸いだ。
大学病院大陸のダンジョン
賢者アカボシの安静冒険の舞台である。
①一般病棟の森
産科病棟。多くの部屋が存在するダンジョン。
賢者が安静冒険を繰り広げた大学病院大陸には個室がなく、8人部屋・4人部屋・2人部屋があった。
8人部屋のみベッド差額なしで入れるため、スラム街の空気が漂っていた。賢者は基本的にこのスラム街で過ごした。
常にベッド周りを囲んだカーテンが閉じられているので、視界上でのプライバシーは守られているが、音は筒抜け。ベットの他にはテレビ(有料カード式)がついたショウトウダイと呼ばれる古臭い棚と椅子が一つだけで、個人スペースはとても狭い。(歩き回る必要がないので、慣れれば問題ないが)
悪阻・切迫流産・切迫早産・双子の管理入院・その他、様々な境遇の妊婦族に加え、特に問題のない産後の人も皆同じ部屋。入れ替わりが激しい(どんなに長くても、産科病棟で何年も入院、ということはありえないので)
昼はNSTのドクドク音や面会客の騒音でカオス状態、夜は産後の人が授乳で呼び出されたり、点滴の閉塞音が鳴り響いたり、妊婦族のイビキがジャイアンレベルだったり、とにかく昼夜問わずうるさい。
②トイレ・洗面所・シャワーの山
産科病棟の部屋にいる妊婦族が共同で使用するダンジョン。
洗面所では、経過の軽い妊婦族が談笑していたり、洗濯機を回していたり、シャワー禁止の切迫妊婦族の髪を妖精が洗っていることも。
洗髪の際はMFICUの妊婦族もここで行う。
夏場は扇風機が空回りするだけで、熱帯気候となる。
洗面所の奥に脱衣所を備えたシャワールームが二つ。予約制で、使用可能時間は30分。
③MFICUの洞窟
通称「重症病棟」と呼ばれ、切迫妊婦族に恐れられているダンジョン。賢者は30w時点で移動、36wで去った。
魔法薬「ウテメリン」がMAXを突破し、魔法薬「マグセント」の投与が決まると、心電図を装着しなければならないため、こちらのダンジョンに移動する。
広いオープンスペースとなっており、壁際にベットが6床。一般病棟と同様に個人スペースはカーテンで囲まれているが、設備の分広く開放感がある。
トイレにはドアがついておらず、カーテン式。洗面所はなく、軽く歯磨きと手洗いができるスペースのみ。洗髪の際は一般病棟の洗面所を使用。
スペースの奥は陣痛スペース(やはりカーテンで区切られている)となっており、出産時前はうめき声や叫び声が昼夜問わず響き渡る(これが原因でMFICUにいたくないと泣かれることもあるらしい。賢者は平気だったが)。その分、重症病棟だけあって面会客が大人数で現れ騒ぎ回ることがなく、賢者はそちらの方が助かった。
ちなみに分娩室もMFICUにあるドアから入ったところにあるので、陣痛時は子宮口が開き妖精のGOサインが出たら、歩いて移動させられる。
④診察室の塔
預言者が妖精をともない(必ずともなうという決まりがあったようだ)秘術「超音波」で子宮頸管長をはかったり、絨毛膜羊膜炎の呪いを浄化する洗浄を行ったり、秘術「エコー」で勇者の成長を確認する部屋。
⑤NICUの町
産科病棟と同じ階にある、早産児や何らかの問題を抱える勇者を治療・保護する施設。
この町があるかどうかが、病院系大陸を選択する上での大きなポイントとなる。
⑥新生児室の城
勇者アカ坊も無事お披露目された、よくあるガラス張りの向こうのカゴに勇者が並べられているスペース。
授乳指導や沐浴指導も行われる。
切迫妊婦族の目標として思い入れが深い場所だ。しかし、その裏舞台には育児冒険の幕開け、「初乳バトル」で戦う者たちの姿があったことを、出産後初めて知ることとなったのだった・・・・・。
面会でのマナーを守ろう!
大人数が産科病棟にて安静冒険を送る大学・総合病院大陸。
賢者の思う最大のデメリットは病院大陸側にはあらず。
居酒屋でしゃべるが如く、大声で話し続ける大人数の友人たち。
連れてきた上の子が大声で走り回っていても、祖父母や騎士は注意することなく放置。
面会時間を守らない。
果ては、面会に来るなり騎士が「パチンコ行ってくるから」と小さな上の子を絶対安静冒険中の切迫妊婦の元に残して姿を消し、妖精が多忙な業務の傍ら世話をするハメに。
「周りだって、もうすぐ母親になる人たちばかり。子どもの粗相くらい大目に見てくれるだろう。」
「周りだって、私と同じように家族と離れて寂しい思いをしてるんだから、大目に見てくれるだろう。」
そんな気持ちからだろうか。面会のルールやマナーをなおざりにし、他の切迫妊婦に迷惑をかける・・・・
賢者が安静冒険を繰り広げた大学病院大陸でも、残念ながらこのような光景が日常茶飯事だった。
確かに、
ストレスがたまる安静冒険中、少しくらい友人たちとハメを外したくもなる。
切迫妊婦に代わり四六時中上の子の面倒を見ていれば、疲れることもある。
自分の娘が大変な状態なのだから、時間を問わず顔を見たい。
たまには騎士だって、息抜きしたい・・・・
そんな気持ちも分かる。
だがしかし、病院大陸は自宅大陸とは違う。病院大陸は「公共の場」であることを忘れてはならない。
ルールはルール。マナーはマナーである。
ましてや預言者や妖精の業務を妨げる恐れがあっては決してならない。
周りの切迫妊婦族が、できるだけ勇者の在胎週数を稼がねばならない・・・・と安静冒険の掟を貫いているときに、そのすぐそばで他人の耐えがたい騒音を聞かされ続けていたらどうだろうか。
自分の点滴などを管理する妖精が、面会に来た他人の子どもの世話に追われて業務に支障をきたしたら、どうだろうか。
さらに言うと、産科病棟には、切迫流産・切迫早産のみならず、さらに深刻な、辛い状況下におかれている人もいるのだということは、決して忘れないようにしたい。皆が皆、「もうすぐ母親になるのだから、他人の子どもが騒ぐのくらい大きな心で受け入れたら?明日は我が身なのよ。」などという理屈が通用する状況にはないのだ。
もちろん、面会先で子どもが騒ぐのはどうしようもないが、それでも連れてきた人が子どもをあやしたり、騒がしくなってきたらいったん外に連れ出したり、面会時間を早めに切り上げたり、できるだけ周りに迷惑をかけないための気遣いが必要だ。
ましてや、大人なら言わずもがな。友人が大人数で面会に・・・・というのは安静冒険中は遠慮してもらった方がよい。面会時間も節度を守ろう。
友人たちと賑やかに話すのも、上の子とめいっぱいはしゃいで可愛がるのも、あと一息の辛抱だ。
もし周りが目に余る状況で苦情を入れたい場合は、直接伝えるとトラブルの元になりかねないので、妖精を介して伝えるようにしよう。